はてなブログトップに挙がってるお題が「組織運営」なので、ISO9001についての記事をUPするにはいい機会と思ったのですが、お題って先に提示されるものだから実質手遅れなんですねorz
でも、当分このISO9001の記事を書いてないし、会社で丁度マネジメントレビューやったので、それを振り返りながら<マネジメントレビューとは何ぞや?>ってことを記事に書きたいと思います。
まずは、ISO9001の要求事項からマネジメントレビューの項を抜粋します。
9.3 マネジメントレビュー
9.3.1 一般
トップマネジメントは、組織の品質マネジメントシステムが、引き続き、適切、妥当かつ有効でさらに組織の戦略的な方向と一致していることを確実にするため、あらかじめ定めた間隔で、品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。
9.3.2 マネジメントレビューへのインプット
マネジメントレビューは、次の事項を考慮して計画し、実施しなければならない。
a)前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
b)品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化
c)次に示す傾向を含めた、品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に関する情報
1)顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック
2)品質目標が満たされている程度
3)プロセスのパフォーマンス、並びに製品及びサービスの適合
4)不適合及び是正処置
5)監視及び測定の結果
6)監査結果
7)外部提供者のパフォーマンス
d)資源の妥当性
e)リスク及び機会への取り組みの有効性
f)改善の機会
9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット
マネジメントレビューからのアウトプットには、次の事項に関する決定及び処置を含めなければならない。
a)改善の機会
b)品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性
c)資源の必要性
組織は、マネジメントレビューの結果の証拠として、文書化した情報を保持しなければならない。
○マネジメントレビューって?
<マネジメント>の<レビュー>なので、<経営状況の確認>と解釈すればいいと思います。
要求事項には「トップマネジメントは・・・レビューしなければならない」とあるので、マネジメントレビューの実行責任は<経営のトップ>にあると読み解けます。
経営状況を確認するには<インプット>が必要です。イメージ的には経営会議などで各部門が業績を報告する=インプット、という感じでいいと思います。
そこからの<アウトプット>は要求事項に3項目挙げられていますが、
改善の機会=業績を上げるチャンス(組織の内外問わず)が何かを明確にする
品質マネジメントシステムのあらゆる変更の必要性=組織の運営に関するあらゆる変更について(人事、規定の改定、業務マニュアルの改訂、大きい話なら事業転換など)
資源の必要性=上2つを実現するため、目標を達成するために必要な資源(ヒト・モノカネ・知識)が何かを明確かつ手当てする
以上、大項目3点を決定・処置する必要があるとされています。
内容的には組織のこれからの方向性を指し示すことですので、マネジメントレビューのアウトプットの実行責任もトップマネジメント=経営のトップ・・・である必要があります。
○日本のISOの歴史が管理職の責任をあやふやにする。
世界標準の規格であるISOですから、要求事項の原文は英語で書かれています。かつて日本にISOが上陸し、ISO9001ブームが起こった時から、要求事項の翻訳はある意味間違っているし、今でもその代償が残っていると思います。
まずは<Quality Management System>を、どストレートに<品質マネジメントシステム>と訳していること。これは早くやめるべきだと私は考えます。
この直訳が、ある意味仕方ないことだと思う点として、<日本品質"Made in Japan">が世界でも認められた時代であったことと、ISOが浸透してきた時代が近かったことです。どうしても「品質の良い製品を作っている、それを審査によって世界標準として認められる」という解りやすい構図でもあったし、品質を良くすることは間違ったことではない。
しかし、今でもISO9001の認証のメリットは?という問いに対してあらゆる審査機関は「世界標準として認められること」を挙げています。(いろんな審査機関のセミナーを受けての感想です)
規格の改定により2015年版より「<Quality>が差しているのは<企業品質>であること」が推され始めました。要求事項を見直すと、経営に関する"やって当たり前のこと"しか書いてないのです。それは最新版である2015年版の英文原版でいきなり出てきたわけでなく、2000年版以前から不変のものです。
ISO9001の要求事項が示す<Quality>は<企業品質>である、と理解しやすくするためには、ドラッカーのマネジメントを読まれると良いと思います。私ももしドラブームの時に読んで「これ、ISO9001とほぼ同じじゃん!?」と感じました。
話がそれましたが、ISO9001は、自分たちの組織が作る「製品やサービスの品質」に関してのみ運用で使われていると理解されている経営者が未だ多いと思います。
ISO9001がトップマネジメントに要求することは、業務プロセスに要求されることよりも比率が高いです。その点を含め、<ISO9001=企業品質の認証>と理解を変えないと、業務プロセスに対するPDCAばかりに注力し、経営に関するプロセスが希薄になることに繋がり、時間とコストを掛けるばかりで、規格の本質から逸れていくことになります。
○トップの役割とマネジメントレビューの位置づけ
私の会社ではISO9001の認証をキッカケに、マネジメントレビュー会議と称する全体会議を設けることにしました。が、要求事項の本質とは少し外れていると近年感じてきています。
一般的(?)かどうかわからないですが、ISO9001の要求事項と、企業における役職や会議体を並べると、こんな感じになるのではないか…と最近思い始めました。
トップマネジメント=CEO:最高経営責任者
管理責任者=COO:最高執行責任者
マネジメントレビュー=経営会議や取締役会
これでもしっくりこない方はいらっしゃると思います。日本の会社法では、取締役や代表取締役に関することしか定めがないし、日本企業でCEOやCOOを役職として設けるのは大企業くらいしかないからです。
しかし、世界標準として要求事項が確立されたISOは英語であり、今でも世界の中心はアメリカってことは続いていることから、CEOやCOOという役職の概念から、ISO9001の要求事項は作られたのではないか…と想像できませんか?
私はこの発想から合点しました。
最高経営責任者が企業の目標を掲げ、最高執行責任者が目標実現のために業務を管理・指揮し、経営会議で各部門からの業績報告を受け、それをもとに次期に向けての目標を最高責任者が掲げる、このサイクルが続いていくのです。
マネジメントレビューは、日本組織で置き換えれば取締役会に相当するものです。
○私の会社での失敗(?)談
私の会社のマネジメントレビューの失敗は、これを「会議」と称したことと、原則社員全員参加としたことです。(全員出席できるくらいには小規模な会社です)
全員参加としたことで、報告義務が全体に分散されてしまいました。このため、会議資料作成は末端社員が行い、会議で報告するのも末端社員になってしまい、管理職の役割があやふやになってしまいました。
また「会議」というのは<決定>があることが求められます。経営陣が「決定がない会議などやってもムダ!報告だけの会議は認められない!」なんて言い出してはいるものの、末端社員は目標や業績に関する報告できることが精々で、決定権など持ち合わせているものじゃありません。
決定まで末端社員が行う雰囲気になっているのが最悪です。決定は、決定権を持つ取締役がやるべきですし、ISO9001の要求事項の解釈では、アウトプット=決定はトップマネジメントの役割なのです。
今のやり方を続けるなら「報告会」と名称を変え、アウトプット=決定の場は、経営陣である取締役で行うのが理想なのかなぁと思っています。
会社では、半年に1度(年2回)のマネジメントレビュー"報告会"を行っています。本日その1回を行いましたが、やはり議事について1案件も決定までには至りませんでした。
半期に一度の全体会議の初っ端から胃が痛くなったので、救急箱の胃腸薬飲んだらやっと効いてきた。
— スプレム@ひなはづチャンネル (@splem_rs5025) December 27, 2018
会社に(というか経営陣に)対して建設的かつ攻撃的な内容に報告書を仕上げたプレッシャーなんだろうけど、そう思いたくないね。午後からの出番でがんばる。
「現状はこうなっている」、「だからこういう提案がある」、「だが決定権がないからGO or NGだけでも判断して欲しい」と報告したものの、経営陣の雰囲気はこれまで通り抽象的な方針を示唆するまでに留まる雰囲気です。
また、管理職からの報告なし&会議室からの退室に対してもお咎めなしという風潮。末端社員としては、報告書作るのも徒労ですが、提案に対しての評価が全くと言っていいほどない、管理職は何もしない状況は、正直モチベーションの低下に繋がっています。
胃を痛めた割には成果までには至りませんでしたorz
この記事を見た経営陣に当たる方がいらっしゃいましたら、マネジメントレビューの運用や、明確にアウトプットの責任を果たすことにご留意頂けたら幸いです。社内からの報告を受けることがゴールではありません。そこから方向性を示すことがスタートなのです。
今からISO9001をはじめられる、あるいは運用を見直す組織の方は、マネジメントレビューの位置づけを理解し、組織が次のステップに進むために、有効な活用をされることを期待します。